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旅のお仕置き部屋


罰ゲームのような宿に、泊まっちゃった経験ありますか?
私はあります…その名は「熱海のN」

ある年のG.W前のこと。宿の予約レースに出遅れ断られ続けていた私は、ネットで
「海の見える露天風呂付き部屋」
格安宿を発見しました。

その時、「そんな部屋が、連休直前に空いているということ自体が怪しい」という夫のまっとうな意見に従っておけば…。
しかし私は愚かにも、「ほほほ、私の強運体質を妬んでいるのね、おバカさん」などと鼻で笑って聞き流したのです。

そして訪れた宿は夫の予感どおり、今までに見たこともないほどの暴力的なほどのボロさ…。




そのほかにも

部屋の冷蔵庫に鍵がかかっている。
夜にならないとロックを解除できないといわれたっビールが飲みたい時には、フロントに電話すれば持って来るという。従業員の手間が増えるだけでメリットなし。ロックの意味がわからない。

暗いと思ったら、部屋の窓がはめ殺し…
ラブホかい!
。そしてシミが浮き出てすすけた色あいの、どっと気が滅入る古い砂壁…。

雑誌で見た写真といっしょだったのは、部屋の露天風呂だけ。とってつけたように(まさにそうだったのでしょうが)新しく、ピカピカなのがむしろ悲しい…。

はい、当然、浴槽にお湯が張られているわけがありません。露天風呂付きの部屋なのに。温泉なのに。涙の海に飛び込みたいくらいの悲しさです。
でも、とりあえずここだけは新しくてキレイだ。それを心の支えに、自分でお湯を入れてお風呂に入れば、とにかく露天風呂だ。と「いいこと探し」をして自分を支えるわたし。

しかし惜しいことにお風呂の目の前はものすごい交通量の国道135号線なので



浴槽から立ち上がるたびに道路を走るトラックのドライバーと衝撃の対面をしなければなりません

騒音もすごく、鈴鹿サーキットのどまんなかか、暴走族の集会でもらい風呂をしているよう。



風呂に入るだけでこんなにどっと疲れたのは、人生で初めてです…。

そしてこんなに家に帰りたかったのは、幼稚園のお泊り会以来…。

たまらず、名物だという「海が見える貸切風呂」に逃れようとしましたが、こちらは見た瞬間くらっとくるような急な階段を、三階分這うようにして上らないとたどりつけません。

しかも予約制じゃないため、何度行っても人が入っています(風呂無しの部屋が多いためと思われる…)。

私たちはそのたびにゴール前のマラソンランナーのようにぜえぜえ肩で息をして、倒れこむように部屋に戻る始末。体を安めにきたはずだったのに、なぜかいつもより体力を消耗しています(涙)。


夜になっても騒音は一瞬もやまず、酒を飲んでも飲んでも眠れません。
私の神経は限界。なにかがぷっつり切れました。

「1万円やるから、10分間静かにしてくでーーー!」
と絶叫し、泣きながら「この砂壁が、この砂壁がいやなのおーーー」と壁を叩いたらしい(記憶なし)。

それ以来、温泉旅館の和室で砂壁だと、夫は「君の嫌いな砂壁だよ、どうしようとオロオロ。たぶんあの錯乱の一夜は、夫にとっても深いトラウマになっているのでしょう…。

やっと長い夜が明けても、まだまだ驚きは続きます。
愛想のいいおぢさんに案内された部屋で朝食を食べようとしたら、仲居さんが入ってきて
「部屋が違います!」

「男性のかたにこちらだと言われたんです」というと「ほんとにもう使えないんだから…」と小さな声で彼を毒づいて(客の目の前で!)
「何が違うんですか?私たちはここでかまわないですよ」と言うと、「お料理が違います」
そして通された部屋の朝食は、明らかにワンランク下(前の部屋のももともとたいしたことなかったけど)

どこまでボロボロにすれば気が済むんだ… 


驚愕ポイントがまだまだ100くらいあったこの宿ですが、夫のショックのツボは、部屋のトイレのペーパーホルダーがパルプテックス(駅のトイレ用の、ペーパーを縦に置くホルダー)だったことだそうです。



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