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ダンナの小部屋


三井ガーデンホテルのロビーに佇むダンナ。
ここは結構好きらしい。

その昔、月末がくるたんびにガスや電話、電気を止められるほど貧乏をこじらせていたツマはひそかに思っていました。
いつか
太い金づる、いや夫をつかまえたら、ゴージャスなホテルや高級旅館に思いっきり泊まり倒してやるわ。

同じ頃、パソコン部品を買うことしか趣味がない男は、うっすらと思っていました。

秋葉原でのショッピングも楽しいけど、なんか世の中には、もっと楽しいお金の使い道があるような気がするなあ…。


そんなふたりが奇しくも結婚したんだから、めでたしめでたし。

とはいかないのが人生でした。やる気満々の妻が満を持してチョイスしたホテルは、ことごとくダンナの
「僕ここ嫌い」攻撃にあったからです。しかし、ハンカチを噛んでばかりもいられません。ここはなんとか、ダンナの好みをしっかりつかみ、ついでに財布も握らなくては。

というわけで以下は、ツマが苦難の末につかんだ、「ダンナの法則」です。旅行嫌いのご主人に悩む奥様方のご参考になれば幸いです。
たぶんならないでしょうが。


KEY WORD1「節度」
@CLUB MED ニューカレドニア

「とにかくスタッフがフレンドリーで楽しくて、ワインも飲み放題で食事も食べ放題なんですう」という夫の同僚女性の熱烈な推薦で、Club Medへの夢が膨らむだけ膨らんだ妻。

そこで以前から憧れていたニューカレドニアのClub Medをさくさくと予約しました。

しかし着いてみると、部屋は
パンフレットとは大違いの貧乏臭さ
あちこち傷んでいるのに補修せずほっといているところが目につき、殺風景ったらありません。なにより、冷蔵庫がない。ということは、部屋でビールが飲めない…目の前が真っ暗になる寂しさ。

それにスタッフも話と大違い。

心の準備もできていないうちから一方的にずけずけとフレンドリーなタイプがいるかと思うと、一方ではホテル案内スタッフは、聞き分けのない小学生を引率する林間学校の教師のように高飛車

いい大人、しかも客への態度とは思えない距離感に、ショックを受けるダンナと私。。ダンナの心はしょっぱなから萎えっぱなしで、息をするように
「僕、ここ嫌い」と泣き言をつぶやき続けるのです。
だってもう来ちゃったんだからしょうがないじゃん!

しかし妻の必死のフォローとニューカレドニアの美しい海で、少しずつダンナもウキウキ気分に…。やれやれ。

しかし、Club Medの売りであるスタッフの怪しいまでの笑顔のホスピタリティが、どうにもこうにもダンナの肌に合わなかったらしいのです。

景色のいいロビーで本を読んでいると、スタッフが横でいつのまにか手品を始め、
「お前もやってみろ」と殺人的なまでにフレンドリーな笑顔で迫ります。
逃れるようにプールサイドに行くと、そこでも浮き輪を使ったゲームが始まり、ビーチに逃げるといつのまにか、腕立て伏せ競争ゲームの集団に取り巻かれている。
ひとりで静かに本を読みたい、ただそれだけしか願っていないダンナなのに、そんな贅沢はここでは許されないらしく、ダンナを一瞬もそっとしておいてくれません。

ある朝、通りがかりのスタッフに満面の笑みで
「HEY! 今日のプランは?」と聞かれたダンナはついにぶちきれ、
「No planning!」
と怒鳴りました。
(その後も含めて、結婚生活で見たMAX怒り)

しかし相手はへっちゃら。
「そうか、さてはおまえ、新婚だな! わっはっは」と、ヘリウムより軽いジョークを飛ばしてダンナの背中を叩いて大笑い。ムンクの「叫び」のポーズで固まるわたくし。
真っ白な灰になりそうな恐怖でしたとさ…。

以来、Club Medは夫婦にとって、この世で最も恐ろしい場所になったのです。


KEY WORD2「湿度」
フォーシーズンズ リゾート ジンバラン


←ぐったりして横たわるダンナ。この後、ホテルのレストランのサラダで食あたり。










ほんとにほんとに憧れていた、フォーシーズンズ リゾート ジンバラン。海に面したヴィラのプライベート・プールを見た時は動悸息切れ眩暈がし、救心のお世話になりたいほどでした。



しかしなんということでしょう。最初は無邪気に喜んでいたダンナだったのに、二日、三日とたつうちにどんどん衰弱して、目がうつろになってくるではありませんか。

その秘密は、ダンナとパソコンとの長い蜜月期間にありました。人生の半分以上をパソコン・ルームで過ごし、辛いことも楽しいこともパソコンと分かち合ってきたダンナ。彼はいつのまにか
パソコンと一心同体、高温と湿度に極端に弱い「パソコン体質」になってしまっていたのです。

そんなダンナにとって、味わったことがないほどの高温多湿のバリの気候は、一分一秒が拷問だったにちがいありません。

「ここ嫌いだよう。寒くて乾燥している日本に帰りたいよう…」
 1週間の滞在の間、ずーーーとうわごとのように耳元でつぶやき続けるダンナ。妻は心の中でつぶやきました。

「…ってことはつまり、東南アジアは全滅かい!」



KEY WORD3「ネット」
@リッツカールトン大阪 クラブフロア & マンダリンオリエンタル 東京


↑チェックイン後はこのようにベッドカバーがかけられ…


↑夕食の間にターンダウンされてこんなふうに


↑ダブルシンクの洗面所の撮影に余念がないダンナ。この時はまだ機嫌がよかった…


↑クラブフロアの一番気に入っていた席。


↑マンダリンオリエンタル東京の客室。お部屋は本当に素敵でした。


↑ブラインド越しに窓の景色が見られるバスルーム。


リッツカールトン大阪 クラブフロア宿泊…。妻の愛読誌『ホテルジャンキーズ』の特集を読んで以来、憧れ続けていた妻の夢がかなったのは2003年の冬のこと。闇金の取り立て並みにきつい妻の催促に、ダンナがついに重い腰をあげたのです。

そこは夢に見ていた以上のステキな空間。ソファで読書中、ちょっと首を傾けただけでさっと近づいて、ライトの角度を調節してくれるスタッフは、
まるでサービスの妖精のよう

押し付けがましくなく細やかなスタッフの心配りに、さすがの文句いいキングのダンナも
「すごいね」「さすがだね」と感心することしきり。
やっとホテルに泊まる喜びを分かち合えた…。と思いきや、悲劇は部屋に戻った時、起こりました。赤ん坊を抱くように大事に大事に持ってきた愛用のノートパソコンを接続しようとしたダンナが、

ダイヤルアップ接続!?
と激怒したのです
注・2003年当時の話です。もちろん今は違います)。

何接続だろうが
私には超どうでもいい話なのですが、ネット中毒の常として、ダンナもネット環境の鬼。そういえば昔、家に遊びに来た同僚が「僕、個人で光ケーブルを引いているオタク、いやお宅を初めて見ました」と驚いていたっけ…。

なまじサービスへの感動が大きかっただけに失望も大きく、ダンナは態度を豹変。
「クラブフロアの食事が嫌」「レストランの対応が最悪」など、すべて嫌いになってしまったのです。
 
後で聞いたら、
アメリカに出張でいくと、ビジネスホテルでもPC用の回線がふつーに整備されてるのに、日本ではこのクラスのホテルでもこの程度の認識なのか…と,、ショックを受けたのだとか
(それまで、日本のいわゆる高級ホテルに泊まったことがなかったので)


そして2005年12月、オープン当日にワクワクしながらチェックインした「マンダリンオリエンタル東京」でもまた、ダンナの「接続怒り」が勃発。

さすがに前回から2年も経っているだけあって、ホテルのネット事情も大きく前進。
「テクノロジーキット」と記された箱に、ポータブル・オーディオやノートPC用など、4種類に分けられたケーブルがホテルのロゴ入りの豪華な袋に分けて整然と納められていました。一目見たダンナは萌え~状態。



ところが早速PCをつないでみようとすると、袋の中に肝心のケーブルが入ってなくて、フロントに届けてもらうというお粗末さ。

さらにポータブル・オーディオを部屋のオーディオ機器で再生しようとしたところ、説明書にはケーブルのつなぎ方までしか記載がなく、その先の操作は
「詳細はスタッフに確認を」とあるだけ。

すでに歯ぎしり状態のダンナがフロントに問い合わせても、スタッフにその「詳細」はわからず、IT担当のスタッフは忙しくてすぐには行けないという答え。
たぶん、間違いなく、システム関係の問い合わせに忙殺されていたんでしょうねえ…。

そしてさんざん待たされたあげくにやっと来たのは、英語しか話せない若い外国人スタッフ。

ダンナが多少は英語が話せることがわかった時の彼の半泣き笑顔から、
これまでの部屋で、彼がどれだけつらかったかがわかりました…(PCはつながらないわ、説明もわからないわじゃお客も大変ですけどねえ)

そして結局、彼が教えてくれたことはただひとつ。ケーブルをつないだ後、テレビのリモコンの「AUX」を押してください、ということだった。それぐらいのこと、なぜ説明書に書いとかないのか、ほんとに謎です…


「システムそのものはすごいけど、こんな説明書じゃどうしようもないよ…」
とげっそりのダンナ。

ま、この日、ホテルのレストランやバーで遭遇したひどい目に比べれば、ほんの小さなことだったのですが…

でも今にして思えば、オープン初日のホテルというのは、いわば「火事場」

トラブルを楽しむくらいの懐の大きさか、深い愛か、
もしくはM気がある人だけが泊まるべきなんですね。

初日でおお張り切りのホテルに連れて行けば愛が芽生えるだろう、
という私の計算は、
ブッシュのイラク攻撃なみの大失敗でした。



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